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平成30年度施政方針

更新日:2018年2月20日

はじめに

 平成30年「石巻市議会第1回定例会」に「平成30年度各種会計予算案並びに諸案件」を提案するに当たり、市政運営に取り組む所信の一端と施策の大要について御説明申し上げます。

 

 東日本大震災から、早や7年の歳月が過ぎようとしておりますが、この間、私たちは幾多の混乱や辛苦を体験しながらも、長く険しい山を一歩一歩踏みしめながら、様々な苦難を乗り越えて本日を迎えております。これまでの道のりは、決して平坦なものではなく、ひたすら登り続ける日々でありました。

 禅の世界に、「看脚下」という言葉がありますが、震災から8年目を迎えるに当たり、この言葉の意味を改めて心に刻み、道の本質を見極めながら、平成32年度の復興期間終了までに復興を成し遂げる覚悟でおります。

 その実現のためには、市民の皆様、議員の皆様、そして全職員の一徳一心の取り組みが不可欠でありますが、何よりも市政をお預かりする私の最大の責務として、気骨稜稜の信念で市政を運営していく所存であります。

 これまでの歩みにおいては、被災された市民の皆様の住まいの再建を最優先課題として取り組むとともに、医療・福祉・教育の再生、産業の復興など復旧・復興事業を確実に進めてまいりました。いまだ復興は道半ばではありますが、石巻市震災復興基本計画に描いた「新しい石巻」の姿が確実に見えてまいりました。

 市街地部においては、新蛇田、新渡波等の新市街地の形成、これまでなかった旧北上川河口部の堤防や高盛土道路が整備されつつあるほか、新たな街路や橋梁等の整備を進めております。

   半島沿岸部においては、安心・安全な住居の確保のための防災集団移転団地や移転元地の整備及び防潮堤や漁港の整備等のほか、新たな拠点となる公共施設の集約整備を進めております。

 

 平成30年度は、石巻市震災復興基本計画10年間の8年目となり、再生期から発展期へと移行する重要な年となります。本市が、人口減少社会にあっても持続可能なまちとして発展していくためには、更なる地域の価値を高め、新たな魅力と活力あるまちを創造していくことが必要であり、復興事業の加速化と地方創生への取り組みが不可欠であると考えております。

 国の地方創生の取り組みにつきましては、人口減少と地域経済縮小の克服を目指すため、総合戦略の中間年における総点検を行い、点検結果を踏まえた東京一極集中是正に向けて、地方への新しいひとの流れをつくるべく、人生100年時代を展望し、特に若者を中心に、ライフステージに応じた政策メニューの充実・強化を図ることとしております。

 本市においては、国の動向を注視しながら、平成27年度に策定した「石巻市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づいた取り組みを推進することとし、地域経済分析システム等のデータの活用による施策効果の検証、外部委員による施策効果の評価や進捗状況の検証に基づき、必要に応じて石巻市総合戦略の改訂を行ってまいります。

 特に、人口減少が著しい半島沿岸部においては、総合支所を中心としたエリアに、行政、商工、観光機能を集約したコンパクトなまちづくりを進めるため、各拠点整備に早期に着手するほか、公共交通や地域包括ケアのネットワーク形成を推進してまいります。

 内陸部につきましては、震災に起因する地域間の人口移動や周辺環境の変化を考慮した基盤を整備するほか、交通需要の変化に対応する公共交通を充実させ、市域の均衡ある発展に努めてまいります。

 また、復興の進展に伴う新たな課題に対応するため、被災された高齢者等の孤立防止と健康保持を支援するとともに、被災された方々に寄り添った、きめ細やかな福祉政策を実施してまいります。

 さらに、これまで、全国の自治体職員の皆様を始め、国、県、企業、ボランティア、更には世界の多くの国々、世界中の人々から、大変心温まる、物心両面にわたる御支援を賜りました恩義に報いるためにも、復興事業の更なる加速化と新しい石巻市の創造を目指して、誠心誠意、市政運営に取り組んでまいります。

 

 平成29年度は、再生期の最終年として、住まいの再建につきましては、復興完結への道筋が見えてきた年となりました。

 具体には、新市街地の土地区画整理事業につきましては、全地区合計1,360区画において、全ての宅地供給を完了しております。

 また、既成市街地につきましては、新門脇、湊東、湊北、下釜第一及び中央一丁目地区において、全体で1,162区画のうち、今年3月までに累計1,032区画の引渡しを見込んでおります。

 半島沿岸部における防災集団移転促進事業につきましては、46地区65団地において、全ての宅地供給を完了しております。

 復興公営住宅につきましては、入居者資格要件の緩和に伴い、現在必要戸数の精査を行いながら整備を進めており、今年3月までに市街地で3,843戸、半島沿岸部で426戸、累計4,269戸の完成を見込んでおります。

 一方、自立再建促進プログラムに従い、入居率が低下した仮設住宅団地の集約化を進めてまいりましたが、平成30年4月から、順次、各仮設住宅団地の供与期限を迎えることから、自立困難世帯等に対しましては、自立生活支援や伴走型支援等を行い、引き続き自立に向けた取り組みを進めてまいります。

 災害時において、的確かつ迅速に被災状況等を把握し、避難指示等の災害活動において中心的な役割を果たすとともに、防災・減災に役立つICT技術を駆使したシステム活用による先進的な防災拠点として、石巻市防災センターが、今年3月までに完成する見込みとなっております。

 保育・教育環境の整備につきましては、被災した保育所、小・中学校の移転による新築整備を進めておりましたが、昨年4月に、釜保育所、渡波保育所、雄勝保育所が開所し、更には渡波中学校が開校したほか、8月には雄勝小・中学校が併設校として開校いたしました。

 川とまちをつなぐ新たな空間を創造し、中心市街地の活性化を図ることを目的としたかわまち交流拠点内に、昨年6月に「いしのまき元気いちば」がオープンしたほか、牡鹿半島を中心に、歴史や文化、豊かな自然を舞台に、アート、食、音楽の総合芸術祭であるリボーン・アートフェスティバルが昨年夏に開催され、交流人口の拡大及び賑わいの創出が図られたところであります。

 さらに、北上地区において、環境省が整備する北上フィールドミュージアム内に観光交流施設が今月オープンし、交流人口の拡大が見込まれるところであります。 

重点的に取り組む施策

 それでは、平成30年度に取り組む5つの重点施策について述べさせていただきます。 

1 安心して暮らせるまちづくり

 まず、一つ目の「安心して暮らせるまちづくり」でありますが、被災された方々の生活基盤である、「住まいの再建」につきましては、既成市街地の土地区画整理事業による早期の宅地供給を目指し、快適な市街地の形成を図るとともに、本年度中に全ての復興公営住宅の整備を完了し、応急仮設住宅の解消に向けて取り組んでまいります。また、様々な理由により、在宅での生活を余儀なくされている方々に対する支援のほか、復興公営住宅に入居されている方々の生活の安定を図るための継続した支援を行い、一日も早い自立に向けた取り組みを行ってまいります。

 人口減少・高齢化が進む中、地域の活力を維持するとともに、医療・福祉・商業等の生活機能を確保し、高齢者を始めとする市民が安心して暮らせるよう、地域公共交通と連携して、「コンパクトなまちづくり」を推進してまいります。

 未曽有の震災を経験した本市では、様々な苦難を貴重な教訓に変え、市民の生命と財産を守る、「災害に強いまちづくり」を進めることが重要であります。災害からまちを守り、防災・減災に対応するインフラ整備を加速させるとともに、平時から災害に対する心構えと、緊急時における効果的な初動活動を展開するため、自助、共助、公助に基づく「防災体制強化の推進」を図ってまいります。

 さらに、地域の実情や、あらゆる災害に応じた児童・生徒の災害対応力の育成を図るほか、児童・生徒が自らの判断で適切な行動がとれるように、実践的な避難訓練を通じて、主体的に行動する能力を育成してまいります。

2 産業振興と人づくり

 二つ目の「産業振興と人づくり」についてでありますが、本市の復興を成し遂げ、未来を見据えた持続発展可能なまちづくりを進めるためには、産業の再生が最も重要であります。そのためには、「産業基盤の強化」が重要であり、企業の再生等のための産業集積ゾーンの形成を図るほか、半島沿岸部において、生業の再生に必要な基盤整備を加速させてまいります。

 また、本市の基幹産業のひとつである水産業については、震災により失われた販路を回復させるとともに、養殖業の育成強化を図るほか、農業については、高齢化等により農業構造が変化しているため、コストの削減により、生産性を高め競争力を強化してまいります。

 さらに、地域資源を活用した特産化の研究等に取り組み地域の活性化を図ってまいります。

 市民の生活再建には、雇用の場の確保が不可欠であり、「企業の立地による雇用拡大」が重要であります。民間企業において、幅広い工業用途に活用できる新素材の量産設備が稼動したことから、原材料生産地という地の利を活かし、関連産業や周辺産業の誘致、活用可能な地元企業の掘り起こしなどを進めるほか、創業者に対する支援を積極的に行い、民間活力を生かした地域経済の活性化に取り組み、雇用の拡大を図ってまいります。

 また、地域経済を持続的に発展させていく上では、「産業を担う人材育成」が重要であることから、チャレンジする新たな人材を発掘し支援するほか、地域伝統産業における後継者育成及び技術の伝承に対する支援を行ってまいります。

 農業・漁業につきましては、担い手が減少し、高齢化が深刻な状況であり、持続可能な経営体制を維持するためには、「農業・漁業の担い手の育成」が急務となっております。まずは、農業・漁業の魅力を発信するとともに、移住者等を積極的に受入れ、新たな担い手育成に対する支援を実施してまいります。

 魅力と活力ある地域として発展するためには、賑わいの創出が必要であり、「観光産業の振興」が重要であります。石巻圏観光推進機構による効果的なプロモーション等の実施により、本市はもとより、石巻圏への誘客及び地域の活性化に取り組んでまいります。

 また、中心市街地においては、市街地再開発や川とまちをつなぐ新たな空間の創出により、徐々に賑わいを取り戻しているところであり、更なる活性化を図るとともに、市民や観光客が集える憩いの場の整備を加速させるほか、半島沿岸部においては、賑わいの再生と活性化を図るため各拠点エリアの整備を加速させてまいります。

3 子育てしやすい環境づくり

 三つ目の「子育てしやすい環境づくり」についてでありますが、本市は、震災以降、これまでにない逼迫した人口減少問題に直面しており、永続的に取り組まなければならない課題であります。その要因の一つである、少子化に対応するためには、切れ目ない支援が重要であることから、若い方々に、このまちに魅力を感じ、住み続けたいと思っていただくためにも、「子育て世代の負担軽減」は重要であり、医療費や教育費の経済的負担の軽減のほか、子育てに不安や悩みを持つ方々に対する精神的負担の軽減を図り、子どもの健やかな成長を育んでまいります。

 また、子どもの将来が生まれ育った環境に左右されることのないよう、必要な支援を検討してまいります。

 子育て世代が安心して働いていただくためには、「子育て施設の充実」が重要であり、保育施設の整備のほか、待機児童の解消や潜在保育士の掘り起こしを始め保育人材の確保に努めてまいります。

 また、若い方々の人口流出防止や少子化対策の一環として、独身男女の「出会いの場の創出」に取り組んでまいります。

 児童・生徒が安心して教育を受け、有能な人材を育成するためには、「教育環境の充実」が重要であり、通常の学級に在籍する、支援の必要な児童・生徒への個別支援と学級全体の指導の充実を図るほか、読書を通じて、児童・生徒の豊かな人間性を形成するとともに、学校生活における心の安定に向けた取り組みを進めてまいります。

4 市民の健康づくり

 四つ目の「市民の健康づくり」についてでありますが、市民が生涯に渡り、心身ともに健やかな生活を過ごすためには、「健康寿命の延伸」が重要であり、がんや生活習慣病の早期発見や重症化予防に取り組み、一人ひとりの健康づくりをみんなで支えるまちづくりを推進してまいります。

 また、生涯を通じて自分にあった健康づくりには、「こころと体の健康増進」に取り組むことが重要であることから、食育、身体活動・運動、こころの健康など、地域全体で協働した事業を展開してまいります。

 市民が安心して暮らせる地域社会を実現するためには、「医療体制の充実」が重要であることから、市立病院が地域の医療機関との機能分化・連携強化を図り、地域における切れ目のない医療提供体制を充実させるとともに、民間医療機関との連携による障害児・者に対する体制も充実させてまいります。

 市民一人ひとりが、住み慣れた地域で、安心して暮らし続けられるようにしていくためには、「地域包括ケアの推進」が重要であることから、医療・介護の役割分担と連携をより一層推進し、本人の希望する場所で、その状態に応じた医療・介護が受けられる体制や、看取りを含めた在宅医療の充実を図るため、関係者間の円滑な情報共有と対応を推進してまいります。

 また、高齢者のみならず、障害者や児童、生活困窮者等を含む地域のあらゆる住民が支え合い、自分らしく活躍できる地域共生社会の実現を目指して、住民が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制づくりや多機関の協働による包括的な支援体制の構築に向けた取り組みを推進してまいります。

 さらに、国の報告によれば、2025年には、高齢者の約5人に1人が認知症の発症が見込まれることから、認知症への理解を深めるとともに、徘徊高齢者に対するネットワークの充実を図ってまいります。

5 絆と協働の共鳴社会づくり

 五つ目の「絆と協働の共鳴社会づくり」についてでありますが、震災からの一日も早い復興を成し遂げ、新しい石巻を創出するためには、インフラ整備のみならず、「コミュニティ形成と人材育成」を進めていくことが重要であることから、地域に根ざしたコミュニティの復興を進め、住民自治組織の強化、再生及び構築を支援するとともに、コミュニティ再構築に向けた人材面での支援を行ってまいります。

 本市の持続的な発展のためには、人口流出を抑え、市外から人を呼び込む「定住・移住の促進」が重要であり、様々な機会を捉え、情報の発信や収集及び分析を行うとともに、市外の人材を積極的に受入れ、地域活動を行っていただきながら、定住・定着を促進してまいります。

 賑わいを取り戻していくためには、人が人を呼び込む好循環の確立が必要であり、そのためには、「交流人口の拡大」が重要であることから、石巻圏観光推進機構による誘客を促進し、川や水辺を活かしたまちづくりを推進するとともに、本年度は、インバウンド元年として、大型客船の寄港等に伴う外国人観光客に対し、本市の新たな魅力を情報発信できる環境を整えてまいります。

 さらに、スポーツを活かしたまちづくりを推進するため、楽天イーグルスやベガルタ仙台のプロスポーツチームとともに各種イベントや健康増進プログラムを実施するほか、ラグビーワールドカップ2019出場国のキャンプ地誘致及び2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る市民の機運醸成を図ってまいります。

 東日本大震災の最大の被災地である本市では、震災の事実と教訓を、世代や地域を越えてすべての人々へ伝え続けていく「震災の伝承」が責務であることから、遺構の保存や追悼する場の整備を進めるとともに、震災の教訓を伝承する推進体制の構築に取り組んでまいります。

  

むすび

 

 次に、予算編成について申し上げます。

  平成30年度は、「震災復興基本計画」の「再生期」から「発展期」へ移行する年度となることから、10年間の「総仕上げ」に向けた新たな段階に入ることを再認識し、「発展期の礎予算」を編成いたしました。

 
 この結果、平成30年度予算は、

 一般会計で1,518億円、

 土地取得特別会計をはじめとする11特別会計で903億円、

 病院事業会計で59億円、

 全会計の総額で2,480億円でございます。

 

 なお、本市の財政運営につきましては、歳入の中心となる市税が震災前の水準に回復してきたものの、その主な要因は復旧・復興に起因するものであるため、この水準の維持は期待できず、普通交付税においても、人口減少や合併算定替により段階的に縮減されることから、歳入環境は厳しい状況が続くと見込まれます。

 復興後も安定した財政運営が行えるよう、震災復興基本計画の総仕上げに向けた、事業の確実な推進と同時に、縮小していく財源を見据えた歳出構造の転換に取り組まなければならないと考えております。

 組織体制につきましては、復旧・復興の進捗により、これまでも柔軟に再編してまいりましたが、防災集団移転先の基盤整備や被災した小・中学校の整備に完了の見通しがついたことから、関連部署を再編するとともに、道路や橋りょう等の整備を推進するための組織体制の強化を行います。

 また、新たな行政課題である一般廃棄物最終処分場の建設やニホンジカによる農林業への被害対策のほか、スポーツ交流推進のための組織体制を確立してまいります。

 

 以上が平成30年度に臨む私の基本姿勢と平成30年度の予算案であります。

 

 震災からの7年間、全国や世界中から、今もなお続いている心温まる御支援の下、これまで道なき道を切り拓き、復興完結に向け歩み続けてまいりました。

 震災からの復興は道半ばであり、人口減少などの課題も山積していることから、復興事業の加速化に加えて、地方創生にも取り組み、持続発展可能なまちづくりを進めるため、職員の創意工夫と英知を集結させ、勇往邁進、市政運営に取り組んでまいります。

 

 結びに、市民の皆様のお力添えと議員各位のより一層の御理解、御協力を賜りますよう衷心よりお願い申し上げまして、平成30年度の施政方針といたします。

 

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部署名:復興企画部 政策企画課
電話番号:0225-95-1111

企画調整担当
政策推進担当