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平成24年度施政方針

更新日:2017年10月24日

はじめに

 平成24年「石巻市議会第1回定例会」に「平成24年度各種会計予算案並びに諸案件」を提案するに当たり、市政運営に取り組む所信の一端と施策の大要について御説明申し上げます。
 昨年3月11日、マグニチュード9という信じられない巨大地震と、それに伴う大津波が襲来し、東北太平洋沿岸を中心に日本は歴史的な大災害に見舞われました。
 石巻市の被害は、被災地域の中で最大ともいえる甚大なものでありましたが、私どもにとって最も深刻な被害は、死者3,019名、行方不明者557名という、あまりにも多くの市民が犠牲になったことであります。
 ここに、改めて犠牲になられた皆様、そしてその御遺族に対しまして、心から哀悼の意を捧げるものであります。
 市民の皆様におかれましても、発災直後は、劣悪な環境にあった避難所での生活や被災された自宅での生活を強いられたにもかかわらず、地域の復旧に懸命に汗を流し、取り組まれてこられました。このひたむきさ、冷静さ、倫理性の高さは海外から称賛されており、これは私たち東北人としての誇りであります。 
 独立行政法人産業技術総合研究所が昨年夏に実施した、石巻平野における地下の津波堆積物調査で、過去に少なくとも5回の大津波が石巻平野を襲った可能性が報告されております。
 残念ながら、その津波の記憶が伝えられることはありませんでしたが、確かなことは、私たちの祖先はその大津波に負けることなく、その都度立ち上がり、ふるさと石巻を再興し、発展させてきたという歴史的事実であります。
 東日本大震災に襲われ、甚大な被害を受けた私たちでありますが、祖先に負けることなく、これまで以上のより良いふるさと石巻として復興させていくことが私たちの使命であると、決意を新たにするところであります。
 私は、東日本大震災からの本格的な復興と再生に向けて、様々な施策を強い信念と情熱を持って取り組む覚悟でありますが、この大災害から震災復興基本計画のスローガンである「世界の復興モデル都市・石巻」を築き上げるためには、社会的意義のある新たな価値を創造し、大きな変化をもたらすイノベーションなくして新しい石巻をつくることはできないと考えております。
 本格的な復興には、港湾、漁港、河川、道路等多くの社会インフラの整備はもとより、住民一人ひとりの暮らしを取り戻すための住環境や公共施設の整備、生活再建の基礎となる産業の再生、未来を担う子どもたちのための学校施設の整備や人材の育成、新エネルギーを活用した最先端のエコタウンの実現による新しい都市づくり等々多くの事業を効果的に進めていく必要があります。
 平成24年度は、これらの事業を的確に実施し、復興のまちづくりの姿が見えるよう、具体的な道筋を示してまいりたいと考えております。
 私は、決してあきらめないと心に誓い、震災の記憶を未来に継承し、ふるさと石巻の再生とさらなる発展を目指すとともに、支えあう人の心の優しさに感謝しながら、市民一人ひとりの生活再建のため、全力で取り組んでまいります。

重点的に取り組むべき施策

 それでは、復旧・復興に向け、重点的に取り組むべき施策について御説明申し上げます。

 その第1は、「被災された市民の暮らしの再興」であります。
 本市は、今回の震災により多くの住家が被害を受け、現在、仮設住宅に16,703名の方が入居されているなど、不便な生活を強いられています。
 被災された皆様の一人ひとりの暮らしを取り戻すために、仮設から恒久住宅への移動を促進することが、最優先であると考えておりますことから、防潮堤等の海岸保全施設や高盛土道路の整備促進を図るとともに、新市街地の整備や高台への住宅地等の整備を進めてまいります。
 また、災害公営住宅については、公共供給方式と民間活力を最大限活用した供給方式を併用するとともに、UR都市機構に住宅建設を要請するなど、当面3,000戸を目標に、できる限り早期に住宅が供給できる方式を採用し、住民の意向も考慮して進めてまいります。

 第2に、「産業の再生と職の再建への道筋」であります。
 東日本大震災により本市の産業は壊滅的な被害を受け、特に津波による被害は、本市の基幹産業の拠点である漁港施設や水産加工団地、臨港工業施設、中心市街地の商業施設、さらには農地など、あらゆる分野において甚大でありました。
 本格的な復興には、港湾、漁港、河川、道路など社会インフラの整備はもとより、雇用を創出する産業の復興が必要不可欠であり、既存企業の復興のみならず、人口流出を抑え、定住人口を増やすための新産業の創出にも全力で取り組みます。
 また、復興特区制度を含めたあらゆる制度を活用し、被災された事業者に対する再開への道筋を整備するとともに、早期の事業再開への支援を積極的に進めてまいります。
 さらには、将来的な産業の発展を見据え、農産物や海産物等地場産品の特徴を活かした商品の開発や販路拡大などについて、圏域が一体となり、ブランド力の向上と付加価値を高める商品づくりに取り組むことにより、農水商工連携や6次産業化を推進してまいります。
 
 第3に、「子供たちの確かな未来のために」であります。
 現在、多くの子ども達は、津波で被災した学校を離れて、仮設校舎や間借り校での授業を余儀なくされているほか、学区外の避難先からの通学など、厳しい環境での学校生活を強いられております。
 子ども達には、快適な教育環境を提供することが私たちの責務であり、次代を担う子供たちの元気な笑顔を一日も早く取り戻すため、学校施設災害復旧整備計画に基づき、早急に学校施設の復旧整備を進めてまいります。
 また、施設の復旧のみならず、震災による心の痛手を受けた子ども達へのケアに取り組むとともに、家庭や社会における子ども達の生活環境、学習環境を整え、子ども達が将来をきちんと見据えることができるよう、取り組んでまいります。
 
 第4に、「次世代を見据えた新しい都市づくり」であります。
 これからの都市づくりには、地球環境の保全に配慮した新エネルギー活用による循環型社会、世界最先端のエコタウンの実現が不可欠であります。魅力的な都市として本市を復興させるため、地元企業だけでなく、日本を代表する企業・団体も参加した産学官の協働組織として、石巻復興協働プロジェクト協議会を発足させました。
 この協議会は、地域におけるきめ細かい先進的なエネルギー管理システムの構築、太陽光等の再生可能エネルギーによる効果的な地域エネルギー供給システムの構築、情報通信技術を活用した強い地域産業の創造、地域の医療、介護、福祉などにおいて、災害時にも包括的に情報連携のできるシステムの構築を目指しております。
 今後、震災経験を踏まえた「世界の復興モデル都市」として、市民が「安全、安心」で、かつ「環境にやさしい」生活を送ることができる都市を実現するための「さきがけプロジェクト」として、産学官の知恵を結集し、世界最先端のエコタウンの実現を目指してまいります。

主要な施策

 次に、平成24年度の主要な施策についてでありますが、本年度を復興元年と位置づけ、災害復旧、復興事業はあらゆる施策に最優先に取り組むこととしておりますが、総合計画に位置付けている、市民生活や産業の進展に欠くことのできない施策については、厳選して取り組むことといたしました。
 また、復旧、復興事業はスピードをもって取り組む必要があることから、平成23年度から引き続き、切れ目が生じないように進めることとしております。

1 市民生活の復興に必要な基盤づくり

 はじめに、「市民生活の復興に必要な基盤づくり」のための施策の展開でありますが、市民生活の安定のための住環境の整備につきましては、土地区画整理事業や防災集団移転促進事業により進めることとし、住民合意の図られた地区から順次、移転候補地の測量、地質調査や詳細設計を実施するとともに、用地取得や造成工事を早急に進めてまいります。
 そのために必要な土地利用の各種手続きの迅速化のため、「復興整備計画」の策定に取り組むとともに、災害公営住宅の供給推進や、既存公営住宅の新たな改善と有効活用に向け、本市住環境づくりの指針として策定している「石巻市住生活基本計画」及び「石巻市公営住宅等長寿命化計画」の見直しを図ってまいりたいと考えております。
 ところで、本市の100年相当といわれる瓦礫の処理については、今後、二次処理を事務委託している宮城県と連携しながら、倒壊家屋・事業所等の解体撤去、破砕選別処理について、リサイクルを基本として進めてまいりますとともに、災害廃棄物の処理に伴う一次仮置場の管理運営については、火災防止のための監視体制を徹底するほか、殺菌、殺虫を徹底して実施してまいります。
 また、仮設住宅にお住まいになられている方々の交通確保対策として、昨年から運行を開始いたしました仮設住宅循環バスをはじめ、住民バスや離島航路など、地域住民の確かな移動手段を確保してまいります。

2 市民が安心して生活するための防災対策

 次に、「市民が安心して生活するための防災対策」についてでありますが、
 冒頭で申し上げましたとおり、今回の震災により多くの方々が犠牲となり、行方不明となっております。行方不明となられた方の捜索につきましては、継続して関係機関の協力をお願いしてまいりますが、このような被害を繰り返さないためにも、従来の防災に対する考え方を根本から見直す必要があります。国においては防災基本計画を改訂し、新たに津波災害対策編を新設していることから、本市においても、津波災害対策編を新設するとともに、新たな防災計画の策定に取り組みます。
 また、災害時における情報伝達手段の途絶が大きな問題となったことから、防災行政無線については、その復旧と合わせ、デジタル化による機能強化を図るとともに、学校等大型避難所への移動系防災行政無線機と無線電波を活用したファクシミリの配備及び半島部の孤立可能性集落への衛星携帯電話の配備を引き続き実施し、平成24年度はエリアメールを活用した災害情報一斉配信事業の実施や、災害時の情報伝達手段に有効なコミュニティFM中継局の設置を実施し、情報通信、情報伝達手段の強化に努めてまいります。
 さらには、災害の事実を永続的に伝えていくことが、防災、減災にとって何よりも重要でありますことから、震災の被災状況や教訓、復旧、復興への道程、そして震災時における絆の大切さをアーカイブとして後世に伝えるため、関連する記録や資料等の収集整理を実施してまいります。
 特に、次代を担う子ども達に対しましては、震災の事実や災害時の対応方法など、石巻市独自の防災教育副読本を作成し、小・中学校における防災教育を実施してまいりますとともに、自主防災組織活動への支援のほか、防災備蓄施設や防災用資器材、備蓄食料購入に対する新たな補助制度により、地域の防災力の向上を図ってまいります。
 また、放射線対策といたしましては、女川原子力発電所が実施している東日本大震災を踏まえた安全対策や安全管理体制について、関係自治体と連携しながら監視を強めてまいりますほか、福島第一原子力発電所事故による放射性物質の影響について、空間の放射線量や農林水産物に含まれる放射性物質の測定体制を拡充するとともに、測定結果の公表や放射能・放射線に関する情報を提供し、市民の不安解消や風評被害の防止に努めてまいります。

3 市民が健康に暮らせるための施策

 次に、「市民が健康に暮らせるための施策」についてであります。
 住環境の整備には一定の期間を必要としますが、その間、仮設住宅において厳しい生活を強いられている入居者の皆様に対し、仮設団地内に設置した支えあいセンターにおいて専門員による相談・生活支援を実施し、入居者の孤立化の防止、健康や福祉ニーズの把握と対応に努めるとともに、コールセンターを設置し、生活に必要な営繕の迅速な対応を図ってまいります。
 さらに、仮設住宅に加え、在宅避難世帯や民間賃貸住宅入居者に対する健康支援も実施してまいります。
 また、市立病院や雄勝病院が機能を停止し、さらに民間医療施設にも震災の影響があることから、夜間や休日における市民の救急診療に対する不安を解消するため、仮設夜間急患センターの運営をはじめ、各種医療機関等との連携による在宅当番医制事業、病院群輪番制事業の実施や、石巻赤十字病院救命救急センターの運営の支援、仮設雄勝歯科診療所を設置するほか、雄勝診療所や寄磯診療所の運営などにより、医療体制の確保に努めてまいります。
 なお、被災した石巻市立病院の再建につきましては、平成24年度に基本設計・実施設計を実施し、平成25年度中の着工、平成27年度中の開院を目指します。
 今回の震災による生活環境の激変により、特に高齢者や障害者の方は、不安を感じながら生活されていることと思います。
 そのような不安を取り除くためには、震災の影響を考慮した関連計画の見直しが必要となりますことから、第2期地域福祉計画を策定するとともに、障害者計画の策定も早急に進め、震災後の高齢者福祉も含めた総合的な福祉施策の展開につなげてまいりたいと考えております。
 また、介護保険事業におきましては、本来、平成23年度中にこれまでの「高齢者福祉計画・第4期介護保険事業計画」を見直し、平成24年度から平成26年度までを計画期間として策定しなければなりませんでしたが、今回の震災の影響により、それまで蓄積してきた各種データや調査結果の活用が困難な状況となりましたことから、「第4期計画」の内容を1年間延長するとともに、一部施設の充実を図りながら暫定版として第5期計画を策定し、平成24年度の事業を実施してまいりますが、平成24年度中には、改訂版の第5期計画を策定してまいります。

4 市民生活に密着したインフラの復旧

 次に、「市民生活に密着したインフラの復旧」についてでありますが、道路・橋梁については、広範囲かつ甚大な被害を受けており、現在は応急的な修繕を実施しているところであり、その本格的な復旧に取り組んでまいります。
 下水道関連施設についても、沿岸部を中心に大規模に被災し、応急的な対応を行っているところでありますが、本格的な復旧のためには、雨水処理、汚水処理ともに根本的な計画レベルの見直しが必要となっておりますことから、今後、基本的な計画の見直しを行ってまいります。
 また、今後想定される災害において、円滑な避難、迅速な物資輸送と救援活動のため、災害に強い道路交通ネットワークの構築が不可欠でありますことから、既存の都市計画道路や半島部の幹線市道の改良とともに、新たな都市計画道路の整備に向け、関係地権者の皆様の協力を得ながら、用地取得や工事に着手してまいります。
 特に、石巻工業港曽波神線につきましては、防災的視点のみならず、重要港湾「石巻港」と三陸縦貫自動車道を結ぶ重要幹線道路でありますことから、平成24年度末の2車線での供用開始を図るため、JR仙石線との立体交差区間における橋梁上部工新設工事等を実施してまいります。
 また、本市の基幹鉄道であります仙石線、石巻線の復旧につきましては、JR東日本、さらには国、県等の関係機関に対し、あらゆる機会をとらえ、早期復旧に向けて積極的に要望してまいります。

5 市民生活の礎となる産業の復興に向けた基盤づくり

 次に、「市民生活の礎となる産業の復興に向けた基盤づくり」の施策についてであります。
 本市の基幹産業のひとつである水産業につきましては、漁港施設の復旧はもとより、仮設復旧で対応している水産物地方卸売市場の本格的な復興が急務となっておりますことから、これからの水産業に求められる高度衛生管理をはじめ、観光機能や津波避難機能などを兼ね備えた多機能な市場を整備するため、国、県と連携しながら、水産業など関係業界と一体となって全力で取り組んでまいります。
 水産加工業につきましては、水産加工団地の再生を目指し、国、県との連携のもと、沈下した地盤のかさ上げを進めるほか、国、県、市それぞれの補助制度により、事業の再開に向けた支援を行ってまいります。
 また、漁業協同組合等による共同利用施設の整備や共同利用漁船等を取得する事業に関しましては、補助金等による支援を継続してまいります。
 さらに、被災された漁業者の事業資金の確保につきましても、水産業災害対策資金等の利子補給金を措置し、無利子又は低利で借りられるよう、支援してまいります。
 本市の産業の復興にとりまして、特に被害の甚大だった漁業、水産加工業のみならず、農林畜産業や商工業の再生、発展も非常に重要であります。
 被災した水田・畑地の再生につきましては、営農再開までの所得確保策を継続してまいりますとともに、農地の早期復旧を目指し、国、県と連携しながら、全力で取り組んでまいります。
 また、営農再開にあたって必要とする園芸施設、農業機械等の施設整備等を支援するため、東日本大震災農業生産対策事業等を活用し、被災農業者の負担軽減に努めてまいります。
 畜産業においても経営再開のための支援を講じるほか、「茂洋号」を活用した「いしのまき和牛」ブランド化対策助成金を交付するなど、復興に向けた取り組みを行ってまいります。
 また、林業の復旧・復興のため、間伐事業等の森林整備を進めるとともに、地域産材の利活用を促進するため、需要の拡大に努めながら、新たな需要先として大都市部への供給の取り組みを進めてまいります。

 次に、「中小企業者の再生、復興」についてでありますが、急激な円高や原材料の高騰、休業状態の長期化による取引量の減少、風評被害など、市内中小企業の経営環境は極めて厳しいものとなっております。中小企業復旧支援事業により地域コミュニティの一端を担ってきた商店街や意欲ある事業者の早期再開を支援するとともに、市融資あっせん制度災害関連枠並びに緊急経済対策保証料補給事業を継続し、資金の円滑化を図ってまいります。
 また、被災した中小企業等の再生に当たり、既存債務が負担となり、新規の資金調達が困難となる等の問題が発生していることから、「宮城産業復興機構」並びに「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構」の窓口となる、「宮城県産業復興相談センター」や国、県等の関係機関、石巻商工会議所等の経済・産業界と連携を図りながら、説明会や相談会を開催し、二重債務問題に対応してまいります。
 さらに、各種支援施策の迅速な情報提供と活用促進により、甚大な被害を受けた地域中小企業の一刻も早い復旧を図ってまいります。
 また、被災した既存企業の支援や太陽光・バイオマス発電、植物工場等の「新エネルギー等関連産業の集積」を推進するため、「宮城県民間投資促進特区」をはじめとした「復興特区制度」を活用するとともに、現行の企業誘致条例を拡充し、新たな企業の誘致を推進してまいります。
 特に植物工場につきましては、積極的な誘致に取り組みながら、本市の特性を活かした独自の集積を目指し、次世代型農業の普及と産学官連携による新たな産業創出を目指してまいります。
 また、企業の立地や被災企業の移転に必要な産業用地の確保について、浸水区域外への新たな用地を整備するための調査・検討を行ってまいります。
 雇用対策の取り組みにつきましては、石巻管内における有効求人倍率が震災直後から徐々に回復しつつあるものの、給付期間が延長されていた失業保険の終了や求人と求職のミスマッチ、心のケアなど、雇用環境は複雑な課題を抱えていると認識しております。産業の再生とともに、「震災等緊急雇用対応事業」や「生涯現役・全員参加・世代継承型雇用創出事業」の実施により、短期の雇用と併せ地域の人材を育成する長期的な雇用の創出を図り、安心して暮らすことのできる環境を整えてまいります。

6 絆づくりの施策

 次に、「絆と協働の共鳴社会づくりのための施策の展開」についてであります。
 まず、「絆づくりの施策」についてでありますが、今回の震災により、多くの住宅等が流失し、地域のコミュニティが壊滅状態となった地域が数多く存在しており、市民が安心した暮らしを取り戻すためには、絆の原点である地域コミュニティの再生が不可欠であります。
 そのコミュニティの再生・形成の場である集会施設の復旧が急務なことから、既存制度の拡充とともに、新たに被災施設への支援を創設いたしました。
 また、伝統的民俗芸能は、沿岸部を中心に、用具の流失等により継続が困難な保持団体が存在することから、学術的にも貴重な指定文化財について、用具の補修等に必要な経費を補助することにより、その保存と併せ、伝統的コミュニティの再生を図ってまいります。
 さらに、大きな被災地域はもとより、被害の少なかった地域においても、地域の自主的な活動が弱まっており、仮設団地とその周辺地域とのコミュニケーションの不足も懸念されている状況にありますことから、町内会や仮設住宅団地など比較的小さいエリアで開催される事業を支援し、コミュニティの再生を図ってまいります。
 また、これらの地域コミュニティ支援策と合わせ、平成22年6月に策定された「石巻版地域自治システム」により、地域自治システムの構築を、震災復興計画期間との整合性を図りながら段階的に進めてまいります。
 震災直後から、私たちは国内外からの温かい声援、支援を受け、さらに多くのボランティアの皆様が、私たちとの絆を固く結んでいただきました。
 この絆を強めることが、復興への歩みを確かなものにできると考えております。
 そのためには、地域内はもとより、国内外との交流を促進することが必要であると考えております。
 数多くの方々が石巻を訪れ、市民との絆をつないでいただくためにも、観光施策の取り組みが大切となってまいります。
 本市の観光振興の拠点のひとつである、石ノ森萬画館の早期の再生復興を図るとともに、サン・ファン・バウティスタパークをはじめとする主要な観光施設の早期復旧や、観光ルートの再構築等、復興後の再生石巻を見据えた観光復興プランを策定することとしております。
 また、復興に向けた石巻の姿を全国にアピールするため、「食彩・感動いしのまき」として、食を前面に押し出した観光振興を図るとともに、各種イベントを活用しながら「食のまち・石巻」を積極的にPRしてまいります。
 来年は「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」の開催が決定しており、震災からの復興を全国に向けてアピールする絶好の機会でありますことから、JR東日本や宮城県との連携を図りながら、その準備を進めてまいります。
 また、平成25年10月は支倉常長の偉業である「サン・ファン・バウティスタ出帆400年」に当たることから、同年を目標にイタリア共和国のチビタベッキア市と、合併後の新石巻市として姉妹都市を締結し、両国の交流を深めながら国際的な人材育成を図るとともに、今回の震災にあたりイタリア共和国からの多くの支援があったことから、そこから生まれた絆の国際交流の発展にも努めるべく、準備を進めてまいります。

7 子どもたちの確かな未来を築くための施策

 この絆を絶えることなくつないでいくためには、「子どもたちの確かな未来を築く」ための施策が大切であります。
 まず、震災により両親を失った子どもの修学を継続的に支援するため、小学校から高等学校卒業までの間奨学金を給付してまいります。
 また、仮設住宅に入居しながら遠距離の通学を余儀なくされている児童・生徒の通学手段を確保するため、スクールバスを運行し、安全で安心な通学環境を確保してまいります。
 さらに、震災後の心のケアに対応するため、スクールカウンセラーをすべての小・中学校及び市立高等学校に配置し、さらなる教育相談体制の充実を図ることにより、問題行動やPTSDなどの症状を持つ児童・生徒に対応していくとともに、教職員だけでは解決できない問題に対応するため、スクールソーシャルワーカーを配置し、問題の解決に努めてまいります。
 このほか、これまで各小学校の通常学級に在籍する、支援を要する児童を支援するため配置してきた特別支援教育支援員を中学校にも拡大するほか、確かな学力を身につけるための子ども未来づくり事業や、小学校において義務化された外国語活動を円滑に進めるため、外国語指導補助員を配置するなど、子ども達の学習環境の整備に努めてまいります。
 これまで進めてきました市立高等学校の統合につきましては、市立高等学校統合事業基本計画に基づき、学校施設の整備に向けて実施設計を行うほか、新設高等学校として校名を検討してまいります。
 家庭教育環境におきましては、保護者等を対象とした「家庭教育学級開設事業」を学校・家庭・地域の連携を図りながら展開し、家庭教育の学習機会を提供して家庭教育力の向上に努めますとともに、震災で傷ついた保護者や子どもの心のケアの支援を行うほか、各地区で開催してまいりました「まちなか実験室」を継続して科学に対する興味や関心を高め、創造力と思いやりのある豊かな心を持つ子どもの育成に努めてまいります。
 また、両親の就労により放課後の保育が必要な小学校低学年の児童の安全と健全な育成を図るため、開北地区、万石浦地区及び向陽地区の放課後児童クラブについて、専用教室の整備を進めてまいります。
 次に、「就学前の子どものための保育環境の整備」についてでありますが、公立保育所のうち9施設が使用不能となり、待機児童が増加していることから、井内保育所の新築、渡波地区及び牡鹿地区への仮設保育所の建設、鹿妻保育所の増設により、新たな受け入れ増加を図るとともに、震災により人口動態が大きく変化している状況から、新たな居住地の動向を見据えながら、地域バランスのとれた保育施設の整備を図るため、保育所再配置計画を策定いたします。
 また、子ども医療費助成のうち、入院分に係る助成について小学校6年生まで対象を拡大し、子育てに伴う家庭の経済的負担の軽減を図るほか、一人親世帯の子どもの健全な育成に必要な事業を進めてまいります。

8 市民の笑顔を取り戻すための施策

 この絆と協働の共鳴社会づくりに欠かせないのは、「絆の主役である市民の笑顔を取り戻す」ことであります。
 石巻工業高校の甲子園出場のニュースは、石巻市民にとって明るい大きなニュースであり、市民に勇気と希望を与えてくれました。
 また、震災後間もなく、多くの芸術家の皆さんが市内の避難所を訪問して行った活動は、市民の心を癒し多くの笑顔を与えてくれました。
 市民が健康で活力ある生活を確保するため、スポーツ振興を総合的・計画的に推進する石巻市スポーツ振興基本計画に基づき、市民を始めスポーツ関係団体や関係機関との「協働」により各種事業に取り組むとともに、体育施設の復旧に努めてまいります。
 さらに、総合型地域スポーツクラブとして、「いしのまき地域スポーツクラブ」が昨年4月に発足したことから、市民が主体となり誰もが気軽に楽しめるように積極的に運営の支援を行ってまいります。
 また、芸術や文化の分野におきましては、被災者を対象とした芸術鑑賞事業やカラオケ教室などの参加型事業、被災児童生徒を対象としたアウトリーチ事業などを実施し、市民の心の豊かさの復興にむけて、文化芸術事業を積極的に実施いたします。
 津波により被災し、現在も使用不能となっている市民会館、文化センターにつきましては、博物館機能と文化ホール機能を併せもった複合施設を「石巻市の文化の振興とまちづくりのシンボル」として再建するため、平成23年2月に策定した(仮称)市民文化ホール基本構想(基礎調査)も活用しながら、教育委員会内部に検討委員会を設置し、基本構想策定に向けた検討を開始いたします。
 さらに、地域の協働の場として重要な役割を果たしてきた総合支所や公民館につきましては、その多くが被災し、現在、雄勝と北上の両総合支所は仮設庁舎での限られた機能を維持するにとどまっており、公民館事業についても縮小せざるを得ない状況となっております。総合支所と公民館の復旧事業につきましては、再整備のあり方についての基本的な方向性を検討し、基本計画の策定に向けて準備を進めることとしております。

むすび

 先日、復興庁が発足し、本県には、復興局、本市には支所が開設され、復興の大きな力になるものと期待をしているところであります。今後、復興のスピードをいかにあげていくかが重要であり、国・県の指導をいただきながら、産業の再生のための復興推進計画、農地転用等手続きのワンストップ処理のための復興整備計画、財源確保のための復興交付金事業計画の3つの計画を策定し、各復興事業の加速化を図ってまいります。
 これらの事業を円滑に進めるためには、しっかりとした組織体制で臨まなければなりません。そのために震災復興部を設置したところであり、今後も、事業推進に必要な組織体制につきましては、的確に対応してまいりたいと考えております。
 また、これらの施策を確実に進めていくためには、市職員によるマンパワーが重要な要素の一つであり、震災関連部門に人材を重点配置することとしておりますが、必要十分な職員の確保が難しい状況にありますことから、平成24年度においても地方自治法の規定に基づき、他の自治体からの中長期の職員派遣を受け入れするとともに、任期付職員の採用についても検討すべく、関係条例の整備を今期定例会に提案いたしております。
 以上の施策の展開に必要な予算として、一般会計では、2,632億円、土地取得特別会計をはじめとする10特別会計では、599億4,153万4千円、病院事業会計では、24億780万3千円、全会計の総額で、3,255億4,933万7千円を計上することといたしました。
 本市の予算規模は、復興事業が本格化することから、当面高い水準で推移することが見込まれますが、震災の影響により本市の歳入の根幹である市税収入の見通しは非常に厳しく、これまで以上に厳しい財政状況が続くものと見込まれます。
 そのため、今後の健全な行財政運営に向けた行政改革が必要でありますが、平成23年2月に策定した石巻市行財政改革プランは、前提としていた環境が震災により大きく変化したことから、そのすべての実施は難しい状況となっております。当面は、内容を再度精査しながら、実施可能なものについては引き続き取り組むこととし、震災後の新たな行政改革のあり方につきましては、今後検討を進めてまいりたいと考えております。
 以上が平成24年度において、私が市政運営に取り組む所信と施策の大綱であります。

 復興元年として、本市がこれから歩む道は非常に厳しい道程であると、私も覚悟しております。
 しかし、市民の皆様が復旧に向けて結んだ絆、全国、さらには全世界から差しのべられた絆は、私たちにとってかけがえのない希望であり、力であり、勇気であります。
 この希望を糧に、市民の皆様、議員各位、そして全職員が膠漆(こうしつ)の心で一つになり、本日御説明申し上げました諸施策を着実に実行することが、復興の実現につながると確信しております。
 最後に、市民の皆様並びに議員各位には一層の御理解と御支援を賜りますよう衷心よりお願い申し上げまして、平成24年度の施政方針といたします。 

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部署名:復興企画部 政策企画課
電話番号:0225-95-1111

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政策推進担当